第二段 なでかしづく

梅蔵ちゃんの出身地は、東京に二軒しかないという、町の鳥屋さんだ。

ここのがんこおやじの口癖は、「オレは鳥屋50年」。
育児(鳥)論について、こんこんと語り始める。
育児(鳥)というのは、ちゃんと時間をかけんといかん、 最近は何でもインスタントで、手を抜きすぎだ、…云々。
私はこういう、生涯現役職人おやじが結構好きだ。
理論の正否はともかく、 仕事へのプライドが高いのは良いことだ。

私は、鳥を飼うのは初めてだから、 プロ(=おやじ)の育児論を忠実に実行した。
まず、むきエサは、前の晩から水につけてふやかしておく。
青菜をすり鉢ですり、ボレー粉を砕いたモノを入れ、 ふやかしたむきエサを入れて湯煎にかけて40度にし、 おなかいっぱいになるまで食べさせる。
与えるのは1日に3回、 あとは、湿ったエサを巣箱の片隅に入れて、静かに寝かせておく。
1日3回というと、常識的なヒナの育て方に照らし合わせると回数が少ないが、「子どものうちは寝ることに集中させる」という、おやじなりの理屈があっての数字なんである。

私的理想な1日3回とは、 朝7時、昼12時、夜7時。
自営ゆえに昼過ぎまで寝ている我が家では、 朝7時なんてのは早朝どころか、まだ夜中だ。
寝ぼけながらごはんをやり、 そのうのふくれた鳥を懐に入れると、 つい誘惑に負けてソファで一緒にうとうと。
本当は構っちゃいけないらしいんだけど、今まで兄弟と一緒にあっため合っていたのに急に一人で巣箱じゃかわいそうなんじゃないかと、ここだけ都合の良い理屈をこねるあたり、性格が表れている。
フトコロの梅蔵ちゃんも幸せそうに甘えてるし。
ああ、久しぶりのケモノのいる生活。うふふ♪