第七段 とびたつ
「羽を切るべきか、切らざるべきか」ー。
鳥を飼う人なら、みんな悩む問題なのではないかと思う。
鳥を飼うのが初めてな私ならいざ知らず、 子供の頃さんざん鳥を飼ってきたダンナをもってしても、 「どちらとも良くて、どちらとも悪い」と言わせる。
さもありなん、 医者だって、日本とアメリカじゃ、真反対を唱えている。
日本の医者は、絶対切ってはだめ、といい、 アメリカの医者は、羽を切らないのは虐待とまで言い切っている。 (いろんな点でアメリカと共通意見の多い日本の医者が、 この問題だけは頑なに譲らないのは何故だろう??)
梅蔵ちゃんの里、鳥屋のおやじは、 「絶対羽を切るべし」派だ。
「羽を切って、ちゃんと躾をしないといかん。 躾もせずに育てられている鳥が多すぎる。」 と、これもまた持論を熱く語ってくれる。
シツケ--。魅惑的な響き。
そうよね、鳥だってきちんをシツケをすべきよね。
「鳥が羽をばたつかせて飛ぶ練習を始めたら、切り時。 最初は無料で切ってあげるから連れてきなさい。 時期を逃すと、もう羽は切れないからね。」
一週間の入院生活を終え、退院してきた梅蔵ちゃん。
出して、出して、と大騒ぎ。
病院の先生には「当分外出禁止」を言い渡されているので、 退院してきたその日は、そのまま布をかけられ、寝かされる。 (夜の間もずっと出せと騒いでいたようだが。)
翌朝、世話をすべく、プラケースのフタを開けるとー。
ホップ、ステップ、ジャンプ、フライング!
夜通し騒いでいたとき、きっと脱出プランを練っていたに違いない。
「あそこに足をかけて、あそこでこっちの端をくわえて…」
ろくすっぽ飛べないと思っていた、まだ生後一ヶ月ちょっとのヒナが、 結構深さのあるプラケースを
三歩で登って飛んでいってしまった。
飛んでしまったので、 羽切り作戦はこれにて終了。 シツケの話も露と消える。
ていうか、 お前いつ、羽ばたきの練習した?
もちっと人生、 インターバル期間があってもよくないか?