第四十五段 あかし
「本当にセキセイインコなのか?」
まるで、「自分は何者」的哲学な問いかけだが、
考えてみれば、こいつが鳥であるという根拠は、自分の知識と記憶と、
「セキセイインコ?はいこれ」
と渡してくれた鳥屋のオヤジの信用度にすぎない。
犬を飼っていたときは、血統書というものがあったが、
少なくとも梅蔵は、そんなもの持ってない。
というわけで、梅蔵に関わる公的書類というのは、
いきおい購入時のレシートのみ、ということになる。
経理のために領収書の山を整理すると、
梅蔵購入時に鳥屋のおやじから渡された、極めてテキトーなレシートが出てきた。
そのぶっきらぼうな書き方がなんだかとても感慨深く、
お宝として大事に大事にしまってある。
経費にはならんが。
いや、うちの社長兼広報担当者採用費ということで、
今からでも計上しようか?
梅蔵がどこからきたか、兄弟はいたのか、などルーツを探る手立ては何もない。
そう思うとちょっと寂しい気もするし、
これが血統書の効能なんだろうが、
犬猫を拾ってくれば当然そんなものはついてない。
そもそも動物を「買う」ことが一般的になったのって、そう昔のことでもないハズだ。
私の子どもの頃は少なくとも、動物は拾うかもらってくるものだった気がする。
動物は「買ってくる」のが当たり前になった今、
付属する決して安くはない血統書の有無が本体価格を左右していることは間違いないだろう。
待てよ?ということは、梅蔵ちゃんは1900円だから、ルーツが分からないのか?
ま、いいや。
ひょっとしたら「梅蔵」という名の新種かもしれないし。