第四十八段 あだめく

この家の人たちは、 割と、(いや、すごく)、「いぢわる」をする。

犬の口にリードのヒモをグルグル巻きにするとか、
「注射の練習」と称してつまようじをちくんと差す、とか、
歯磨き粉と顔を洗うソープをすげ替えておくとか、
粉薬を口に入れた人に熱湯を持って行くとか。
(しかも、仕掛けられた方は、分かっていても、 歯磨き粉で顔を洗い、熱湯で薬を飲まなければならない)
必然的に、人もペットも打たれ強くなり、 根性が座っていく。
他人の私としては、そんな「いぢわる」が思いつくこと自体、 感心しきりである。

さみちゃんも例外なく「鍛え」の対象である。
前の晩、私がお風呂に入っている間、 梅蔵のハウスにさみちゃんを入れて遊んでいたらしい。
気の小さいさみちゃんがどれほどパニックしていたかは、 ハウスに落ちていたさみちゃんの羽毛量で推し量れるというものだ。
でも、繰り返しやられているうちに、 今ではさみちゃんは、梅蔵ハウスに入れられても平気になった。
すばらしい成長である。
果たしてその「鍛え」が必要だったかどうか、という疑問は残るが。

不思議なんだけど、この家の人達は、 いろいろやるんだが、動物に嫌われたりはしない。
人間同士も子どもの頃からやってやられているから、 寸止め加減が上手なんじゃないかな。
子供の頃ケンカをしておけば、力加減が学べるのと同じ原理だと思う。
愛情に裏打ちされた「いぢわる」だしね。

「いじめ」とは違うのだ。