第四十六段 うつしごころ

動物に恩を売ることはできないと、しみじみ思う。

ダンナの田舎に行く必要ができた。
びっくりするほど遠くもないが、日帰りではないので、 梅蔵ちゃんも連れて行く。
梅蔵にとっては人生初のテリトリー外(病院以外)進出である。
ダンナ実家の家族構成は、ダンナ母、ダンナ妹、 そして15年もののオカメインコ、さみちゃん(♂)。
そこでこいつがどのように振る舞うのか、楽しみでもあり、怖くもあり…。

実家に着いてみると、 こちらの懸念をよそに、梅蔵はおおはしゃぎ。
オカメはさておき(後述)、 大喜びで真っ先にダンナ母やダンナ妹の方へ飛んでいき、 初対面にも関わらず頭やら肩やら乗りまくりの登りまくりの、 お話しまくりだった。
どうやらこいつは「無類の女好き」らしいということが判明。
むしろ私よりも、ダンナ母やダンナ妹の方が「好き」に見える。
ただのヤキモチ…と言われそうだが、 実際、鳥の扱いは私なんかよりずっと慣れている。
なんてったってあの運動神経のキレた梅蔵を空中キャッチできるんである、この二人は。

まあ梅蔵は本来群れで生きる生き物だから、 人がたくさんいる方がうれしいのかもしれない。
男の子は女の人になつく傾向があるそうだし。
ということを差し引いても、動物って 「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」。
「世話をしたから」といって「一番」を期待してはいけない。
動物相手に「こうなって欲しい」は通用しないし、そこに理屈はない。
正直だなあ、動物って。
犬だったらもうちょっと好きなフリをしたりとかもするかな。

ちなみに。
ここんちのオカメのさみちゃんは、大変な「男嫌い」である。
「男」というだけで、うちのダンナはさみちゃんの生涯の敵。
この宿敵同士が出会えば、カゴ越しに激しく戦う音が聞こえてくる。