第五十六段 たつじん
見よ、この名人芸を!
ダンナの「おはなし」を聞くのが大好きな梅蔵ちゃんは、
このようにクチバシをダンナの唇に押しつけて真剣に聞いているのだが、
ダンナが歌うと即ガブをするのだ。
よく、「歌うセキセイインコ」というのを聞く。
うちのダンナが子供の頃飼っていたセキセイインコも
「ちいちいぱっぱ、ちいぱっぱ、すずめのがっこのせんせいはっ、むーちをプリップリップリップリッ♪(プリプリエンドレス)」
とよく歌っていたらしい。
ところが、梅蔵は歌に全く興味がない。
決して教えなかったというわけではなく、
ヒナの頃からずいぶん歌って聞かせてきたのだが、
梅蔵の口から音符というものが出たためしがないのだ。
歌を教えた私が音痴だったからか?
それとも『ふたりの天使』というダンナの選曲がいけないのだろうか?