第五十七段 さいはひとり
絶対に譲れないこと。
「鳥の12時間睡眠」。
これを守るため、梅蔵は、夜10時にはハウスに入れられ、朝10時頃起こされる。
(どうしても飼い主が宵っ張りなので、これ以上早いサイクルは作れない…)
現代は、ペットも人間も、「闇の不足」による体の不調が深刻なんだそうだ。
特に梅蔵はPBFDだったので、体力を下げるようなことは厳禁である。
梅蔵は「今日がとっても楽しい」派、である。
あまりにも1日が楽しいので、「眠ること」は人生最大の大損害、くらいに思っている。
だから夜、寝かせられることが大嫌い。
「おはよう」は景気よくしゃべっても、
毎夜毎夜口酸っぱく言っている「ねんねん」は、絶対にしゃべらない。
ちょっと待てばまた朝はやってくるというのに、そこまでイヤか?と不思議になるくらいだ。
だが、どれほど本鳥がイヤでも、どうあってもハウスにぶち込んで布をかけなければならない。
なぜなら、こいつはオトナになってから、昼寝というものを一切しないのだ。
放っておいたら、徹夜になっても起きて遊んでいるだろう。
ハウスに入れ、完璧に布をかけて「真っ暗闇」にしてやらねば、絶対寝ない。
それほどに「睡眠は損」だと思っているようなのだ。
その代わり、寝たら最後、テコでも起きない。
すごく大きい音が鳴っても、移動している車の中でも、地震でも、とにかく起きない。
(地震は、縦揺れだと「びびび」とお怒りになる。すぐまた寝ちゃうけど。)
それが証拠に朝起きると、
ウンコが一カ所にてんこ盛りになっているのだ。
寝返りぐらい打てよ、と突っ込みたくなる。
ほんっとうに、オンとオフしかない奴なのだ。
朝、ハウスのフタをオープンすると、ハイテンションな鳥が垂直上昇してくる。
とにかく朝が楽しくて朝が大好きなようだ。
そんな姿は見てて希望がわいてくる。
このくらい朝が待ち遠しい人生になりたいものである。