第十三段 あらぬやまひ

検査結果が悪くても元気な梅蔵ちゃん、 割と平気なんじゃないの?と思い始めた矢先に、異変が起こった。
生えたばかりの尾羽が抜けたのである。
しかもたけ続けに4枚も。
お尻がつるんとして、まるで小桜のよう。

「なんで?」

生えたばかりのヒナの羽が抜けるのは普通じゃないことくらいは、 私にもわかった。
しかし、思い当たるフシがない。
頭でっかちの知識からは「毛引き」という言葉が浮かぶ。
なにぶん、鳥を飼うのは初めてで、他の事例に照らし合わせて判断するということができないのだが、 やたら羽繕いはするけれど、抜いてるような様子にはどうしても見えない。
「毛引きって、こういうもんなの??」

その、まさに翌日、病院から電話がかかってくる。
頼んでおいた、健康診断の結果が出たのだ。

「PBFD陽性」

最初に病院に行ったとき、健康診断を勧められた。
外部の検査機関に依頼して、糞の遺伝子検査をするものだ。
通常は2週間くらいで結果が出るのだが、 ちょうど夏休みにかかったりして、 今頃判明したのである。

「尾羽が抜けたりしませんでしたか。」
「はあ、昨日抜けました。」
「その羽は、根元が黒ずんでいませんか。」
「はあ、4枚とも全部黒いです。」

確定。

「PBFDって何?」
私も未だよくわからない。
小難しい本を読んでも、やっぱりよくわからない。
辛うじて分かるのは、
サーコウイルスに感染しているということ。
免疫が下がっていると発症するということ。
要するに免疫不全で、人間で言うエイズみたいなもんかしら?

梅蔵ちゃんの一連の具合悪さは、どうやらこのPBFDから来ていたようだ。
生後1ヶ月前後でちょうどお母さんからもらった免疫が切れて、体調不良を起こしたのだろう。
免疫不全なんだもんね。

ちなみに、この極小のサーコウイルス、 人間に感染すると、イボを作る。
まさにこのとき、私は唇のあたり(要するにチューしまくっていたところ)に、 今まで一度もできたことのない(そしてその後もこれ一度きりだった)、 イボができたのだ。 3,4日で消えたけど。
お医者様には一蹴されたが、 人間と動物の間は、今まで思われてきたよりずっとたやすく 相互に感染を繰り返すことを知った今は、 この出来事は決して無関係ではなかった、と信じている。

それにしても、 一番いやなところに着地しちゃったなあ。
「ええと、今週どこかで診てもらいに伺います。」
「今日、今すぐ来てください!」

私ったら、まだ、事の重大さをわかっていなかったようで。