第十五段 おもひまはす
ちょっと冷静に、家族会議をしてみる。
PBFDとは、
「サーコウイルス」に感染していて、なおかつ、
「免疫不全」な病気、なんである。
病気の原因は二次元的なものであり、
系統立てて考える必要がある。
サーコウイルスなんて、人間にイボを作るくらいの、
それほど特別なウイルスではない。
空気中の雑菌に数えたっていいくらいのもんだ。
どんなウイルスや菌が体内に巣くっていても、
要は、排泄する力さえあれば、何の問題もない。
これが体力(=免疫力)、である。
免疫不全、というのはつまり、体力が足りない、ということで、
梅蔵ちゃんは、何らかの原因で、
(それが生まれた環境なのか乱繁殖なのかはわからないが)
この体力が不足している、ということが予想できる。
小難しい本を読めば、
免疫というと、自己免疫がどうの、免疫過剰がどうしたと理解不能な言葉が並んでいるが、
これらはまったく的はずれの無益な理論で、
体力(=免疫力)とは、細胞の内呼吸、すなわち、
細胞内のミトコンドリアの活動力のことである、と簡単に説明できてしまうことなのだ。
つまり、ミトコンドリアが「うれしいぃ〜」と喜ぶことをやってやれば、
細胞が元気になり、体力も上がって、
巣くっていたしょうもない菌やウイルスは排泄されてしまうのだ。
ミトコンドリアが「うれしいぃ〜」と喜ぶことは、
体を温めることや体を横にして休むことなど色々あるが、
いわゆる「免疫病」は、人間しかかからない、ということが正しいとすれば、
梅蔵ちゃんに足りないのは、
消去法で考えれば、ただ一つ、
「日光」である、ということが割り出せる。
(以上、西原克成医師の受け売りです。
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よくPBFDは、「人間のエイズみたいなモノ」と称されるが、
人間のエイズの原因であるHIVウイルスは、
サーコウイルスなんてかわいいウイルスじゃなく、
免疫細胞そのものを破壊してしまう、
体の細胞が対処できないような激烈なウイルスであり、
そこがPBFDとは決定的に違うところだと思う。
つまり、PBFDの問題点は、サーコウイルスそのものではなく、
ありふれたウイルスにすら負けてしまうような体、というところなのではないか。
ただ抗菌剤を使う、あるいは症状を抑え込むといった対処療法的な治療では対処しきれないのも容易に想像できる。
「日光」を補う方法として、
日光浴をさせる勇気も根性もなかった私たちは、
(捕食「され」動物、しかも病気の鳥を外に出すなんて…)
人工太陽光線「コウケントー」を使ってみることにした。
梅蔵ちゃんが来る1年ほど前からうちにあるのだが、
効果は自分たちで実証済みである。
しかし、鳥に当てる、なんてやったこともないし、
もちろん前例もない。
多分、セキセイインコにそんなことをするのは世界でも私らが初めてだろう。
(世界を語るほど大げさな話でもないが。)
ダメモトである。
どう転んでも、どうせ1年生存率50%、
なにもしないで結果待ちよりはいくらか気が済むってもんだ。
最初は怖がらないように、
光を小さくするアタッチメントをつけて、
遠火であぶってみた。
これが、予想外に逃げない。
どころか、本当に気持ちよさそうに当たっている。
しかも自分からくるくる回って、表と裏をまんべんなく当てているのだ。
まるで自発的な鳥の蒲焼きである。
これは、イケるかも。